本記事は セキュリティ速報シリーズ第21 回 です。
サプライチェーン型攻撃と経営への影響
アスクル事件では、サプライチェーン全体の業務停止・物流混乱が社会インフラにも影響し、企業規模や業種を問わず危機意識の高まりにつながった。
特に、委託先や外部クラウドとの連携部に根本的な脆弱性が潜んでいたことが重要な教訓である。
この事件の主な項目と内容は以下のとおりです。
発生日は2025年10月19日です。影響範囲はECサイト、物流、サプライチェーン全体に及びました
復旧対応は100名以上の体制で継続されています。被害形態はランサムウェア(二重恐喝型)です。
業務への影響として、全注文のキャンセルや一部商品の手作業出荷などが発生しました。
関連企業として、無印良品・ロフトなど委託業務の停止も起こりました。
ランサムウェア攻撃の手口と現実
直近数年で増加するランサムウェア攻撃は、以下のような特徴を持つ。
- VPN機器・リモート環境の脆弱性を狙った侵入
- 標的型メール(フィッシングメール)による初期侵入
- データ暗号化と情報公開脅迫による二重恐喝型手法
- 委託先・サプライチェーンを巻き込む連鎖型影響
被害拡大の原因:VPN脆弱性と運用課題
VPNが狙われる理由
企業ネットワーク外部接続やリモートワーク用に利用されるVPN機器・サービスは、設定ミスやアップデート未実施が重大な脆弱性となりやすい。攻撃者はこうした弱点を集中的に狙ってくる。
VPNの対策方法
- 機器・ソフトの定期アップデートと脆弱性パッチの即時適用
- 強力な認証(多要素認証MFAやワンタイムパスワード)の導入
- 管理画面への社外アクセス制限・IP制限で内部限定運用
- 設定見直しで不要ポート/サービスを閉鎖
- アクセス権限最小化で万一侵入時の被害拡大を防止
事業継続の観点からの対策と教訓
多層防御・教育の重要性
アスクルのような大手企業でも、技術的防御だけでなく従業員教育・社内体制強化が不可欠。標的型メール訓練、EDR導入、バックアップ体制常設、クラウド連携の見直しが今後の必須事項である。
サプライチェーンリスクへの備え
- 委託先企業や外部サービスのセキュリティ水準を契約時に明記・監査
- 危機発生時の情報共有・連携手順の明文化
- 業務停止や個人情報流出時のBCP(事業継続計画)見直し
今回の事例から自社で実践すべき具体策
- 社内ITリテラシー教育・攻撃訓練の定期実施
- OS・各種ソフト/サービスの最新維持・脆弱性診断
- 物理・クラウド両方でのバックアップ運用と復旧手順の明文化
- 多層防御導入(EDR・MFA・ファイアウォール)
- サプライチェーン管理/情報共有体制の構築
まとめ:事例解説を「明日の自社対策」につなげる
アスクル事件は、単なる速報ではなく「攻撃手口・被害拡大要因・具体策・教訓」として学ぶべき事例である。
技術者・経営者・現場担当すべてが当事者意識をもち、今一度自社の各種セキュリティ運用・VPN活用・外部委託リスク・教育体制を見直し、平時から備えを強化していく必要がある。
※本記事は、当社が2025年10月に社内およびクライアント様へご案内したメール内容を基に、Web読者の皆さまにも有益な情報となるよう加筆・編集のうえ公開しています。
出典・参考
固定IP+VPN運用と企業セキュリティの参考になるサイトを、リンク付きで4つ紹介します。
- MillenVPN公式「安全性で選ぶならMillenVPN」
 MillenVPNの暗号化・固定IP利用、通信の安全性について公式が詳しく解説しています。
- NTT東日本「VPN接続には固定IPアドレスが必要!仕組みやメリット・デメリット」
 企業がVPN運用で固定IPを使う場合の特徴やリスク、対策についてまとめられています。
- MillenVPN専門記事「MillenVPN専用サーバー 固定IPで安全!」
 実際の運用方法と安全性、管理上の注意点が具体的に説明されています。
- VPNセキュリティ総合コラム「固定IPアドレスは安全か?セキュリティ上のメリット・デメリット」
 固定IP運用の落とし穴や実践的なリスク対策について網羅的に解説されています。
どのサイトもVPN運用や固定IPによるセキュリティ強化、現場の注意ポイントまで詳しく参考になります。
Weekly セキュリティ
- Weekly Report: LANSCOPE エンドポイントマネージャー オンプレミス版における通信チャネルの送信元検証不備の脆弱性(CVE-2025-61932)について
- Weekly Report: ISC BIND 9における複数の脆弱性について(2025年10月)
- Weekly Report: WatchGuard製ファイアウォール「Firebox」のikedにおける境界外書込みの脆弱性(CVE-2025-9242)について
- Weekly Report: JAIPA Cloud Conference 2025開催のお知らせ
- Weekly Report: 経済産業省が「半導体デバイス工場におけるOTセキュリティガイドライン」の日本語版・英語版を公開

 
		