AIで課題を可視化、無茶楽(MUCHARaku)で成果に変える

テーマティック・フォーカス・ジャーナリズム(TFJ) ― 偶然を必然に変える情報収集法

男性が電車に乗って座っている。車内のポスターをみて何かヒントを得たような表情で右人差し指をたてる。頭の上には電球が光ってる。そのイラストをフラットデザインのシンプルな線画でモノクロ、背景白
目次

電車のポスター1枚から4回連載記事が生まれるまで

普段車移動の経営者が電車で発見したもの

経営者や専門職にとって、効率的かつ独自性のある情報収集は常に課題である。そのヒントは、意外にも日常の中に潜んでいることもある。たとえば筆者の場合、たまたま乗った電車のポスターから、最終的に4回連載の記事を生み出すことができた。この経験を体系化したのが『テーマティック・フォーカス・ジャーナリズム(TFJ)』である。

テーマティック・フォーカス・ジャーナリズム(TFJ)とは何か

定義

テーマティック・フォーカス・ジャーナリズム(TFJ)とは、事前に設定したテーマに基づいて日常にアンテナを張り、偶然の出会いを必然的な発見に変換する情報収集手法である。

従来のジャーナリズムが「何かが起きてから取材する」受動的なアプローチだとすれば、TFJは「テーマを設定してから情報を引き寄せる」能動的なアプローチといえる。

従来手法との違い

従来のジャーナリズム

  • ニュースを「追いかける」
  • 情報収集は計画的・意図的
  • 既存の情報源に依存
  • リアクティブ(反応的)

TFJ

  • 情報が「向こうから飛び込んでくる」
  • 日常の偶然を活用
  • あらゆる場面が情報源になる
  • プロアクティブ(予見的)

実践事例:阪神電車ポスターからの発見プロセス

Step 1:テーマ設定

「技術と現場をつなぐ架け橋」というテーマで記事ネタを探していた時期だった。このテーマが頭の片隅にあったことが、後の発見の前提条件となった。

Step 2:偶然の遭遇

普段は車移動だが、たまたま電車を利用。阪神電車の車内で「ブレーキをエネルギーに変える」というポスターを発見。もし「技術と現場」というテーマが頭になければ、このポスターは素通りしていただろう。

Step 3:即座の反応

ポスターを見た瞬間、「これは記事になる」という直感が働いた。スマートフォンで写真を撮影し、その場でメモを取った。

Step 4:AI壁打ちによる深掘り

帰宅後、AIとの対話を開始。回生ブレーキ技術について質問を重ね、阪急阪神ホールディングスの環境取り組み全体へと調査範囲を拡大していった。

Step 5:視野の拡張

車内を見回すと、SDGs関連の啓蒙ポスターが至る所に貼られていることに気づく。「これはネタになる」という嗅覚が働き、本格的な調査を開始した。

Step 6:コンテンツ化

最終的に、阪急阪神ホールディングスのエココト取り組みを「現場と技術の架け橋」という視点で分析した4回連載記事が完成した。

テーマティック・フォーカス・ジャーナリズム(TFJ)の効果

1. 情報感度の向上

設定したテーマに関連する情報に対する感度が飛躍的に向上する。普段なら見過ごしてしまう情報も、確実にキャッチできるようになる。

2. 偶然の必然化

日常の偶然的な出会いを、コンテンツ制作の材料として活用できる。「運」を「実力」に変換する仕組みが構築される。

3. コンテンツの差別化

他社が見過ごしている視点から情報を収集するため、独自性の高いコンテンツが生まれやすい。

4. 効率的な情報収集

意図的に情報を探すよりも、日常生活の中で自然に情報が入ってくるため、時間効率が良い。

5. ストーリー性の向上

情報収集のプロセス自体がストーリーとなり、コンテンツに説得力と親しみやすさをもたらす。

実践のための5つのステップ

ステップ1:テーマの明確化

まず、現在注力したいテーマを1つ設定する。テーマは具体的すぎず、抽象的すぎない程度に調整する。

良い例:「技術と現場をつなぐ架け橋」 悪い例:「技術」(抽象的すぎる)「○○社の△△システム」(具体的すぎる)

ステップ2:アンテナの設定

設定したテーマを日常的に意識する習慣をつける。スマートフォンのメモ機能やリマインダーを活用し、テーマを定期的に思い出せるようにする。

ステップ3:日常観察の強化

通勤、移動、待ち時間など、普段は「無駄な時間」と考えがちな時間を「情報収集タイム」として再定義する。

ステップ4:即座の記録

関連情報を発見したら、その場で写真・メモ・音声録音などで記録する。「後で調べよう」は禁物。

ステップ5:AI壁打ちによる深掘り

収集した情報をAIとの対話で深掘りし、記事やレポートの材料として育てる。疑問に思ったことはその場で質問し、情報を拡張していく。

ビジネスへの応用

経営判断への活用

市場トレンドや競合動向を「テーマ」として設定し、日常の中で関連情報をキャッチする仕組みを構築できる。

新規事業開発

「新しいビジネスチャンス」をテーマとして設定し、異業種や日常生活の中からヒントを発見する。

人材採用・育成

「優秀な人材の特徴」をテーマとして、日常の出会いの中から人材発掘のヒントを得る。

マーケティング戦略

「顧客の潜在ニーズ」をテーマとして、街中や移動中に消費者行動の変化を観察する。

注意点とリスク

1. 確証バイアスの危険

設定したテーマに合う情報ばかりを集めてしまい、客観性を失う可能性がある。定期的にテーマの見直しを行う必要がある。

2. 情報の質的評価

偶然得た情報の信憑性や重要度を適切に評価する能力が必要。AI壁打ちによる検証は必須である。

3. プライバシーへの配慮

日常観察を強化する際は、他人のプライバシーを尊重し、写真撮影等は適切な範囲で行う。

今回の成果と学び

阪神電車のポスター1枚から始まった今回の調査は、以下の成果をもたらした:

  • 4回連載のビジネスレポート完成
  • 阪急阪神ホールディングスの環境戦略に関する深い理解
  • 回生ブレーキ技術等の専門知識の習得
  • SDGsの企業活用事例の発見
  • テーマティック・フォーカス・ジャーナリズムという手法の体系化

特に重要な学びは、「準備された心にのみ、偶然は微笑む」ということだ。事前にテーマを設定し、常にアンテナを張っていたからこそ、普通なら見過ごしてしまう電車のポスターが貴重な情報源となったのである。

まとめ – 新しい時代の情報収集法

AI時代において、情報収集の方法論も大きく変化している。膨大な情報の中から価値ある情報を見つけ出すためには、従来の「追いかける」ジャーナリズムから、「引き寄せる」ジャーナリズムへの転換が必要だ。

TFJは、忙しい経営者や専門職の人々にとって、効率的かつ効果的な情報収集手法となり得る。日常生活そのものを「情報収集の場」として再定義し、偶然の出会いを必然的な発見に変える。

次回、電車に乗る機会があったら、ぜひ車内のポスターを意識して見てほしい。そこには、あなたが探している答えが隠されているかもしれない。

キーポイント

  • 事前のテーマ設定が偶然を必然に変える
  • 日常のあらゆる場面が情報源となり得る
  • AI壁打ちで情報を深掘りし、コンテンツ化する
  • 「準備された心」こそが最強の情報収集ツール

BITでは、このTFJの考え方をAI活用と組み合わせることで、偶然の発見をビジネスの成果へ変える取り組みを続けている。皆さまの情報収集やマーケティング戦略に役立てていただければ幸いである。

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この記事を書いた人

1995年から25年以上、企業のWebサイト運営を支援してきました。
現在は「無茶楽(MUCHARaku)」を通じて、AIや最新のツールを活用し、より効率的で楽しいサイト改善をお手伝いしています。

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